当時の国連事務総長だったコフィ・アナン氏が世界の20の大手機関投資家に呼びかけたことがきっかけとなり、2006年に発足したPRI(United Nations Principles for Responsible Investment(UNPRI=国連責任投資原則))は、持続可能な社会の実現を目的とし、機関投資家が環境(Environment)、社会(Society)、企業統治(Governance)の課題への取り組み方を投資の意思決定の要素として組み込むことを提唱する原則です。環境や社会に配慮した経営はコストがかかり株主利益に反するとの声をよそに、その後、署名する機関投資家が増え続け、2019年9月現在、2,500を超える機関投資家が、このイニシアチブにコミットしています。
投資先企業の企業価値の向上のためには、短期的な利益ではなく持続的な成長の観点が欠かせず、ESGで優れた企業は長期的には結果的に株主利益と一致するということへの理解が広がってきたことが背景にあると考えられます。
企業が持続的な成長を目指し株主のほかマルチステークホルダーに対し価値を高めていく責任を自覚する必要があると同時に、投資家側も企業のESG課題への取り組みが将来の業績にいかに重要な影響を及ぼすかについて理解を共有し、企業に対し持続可能な価値創造を促す働きかけ(エンゲージメント)が求められています。
そして、こうした動きは投資の世界から範囲を広げ、現在では融資の世界にまで及びつつあります。2019年9月には世界の大手銀行131行が署名し、PRB(United Nations Principles for Responsible for Responsible Banking(UNPRB=国連責任銀行原則))が発足しました。その運用資産総額は日本円に換算し約3,300兆円(国連環境計画 2019.10.11より)で、世界の銀行全体の資産の4分の1を占めていると推定されます。
これからは、銀行も化石燃料関連企業への投融資などで大幅な見直しを迫られることになりそうです。
銀行も持続可能な成長に目を向け始めたいま、私たちは世界が大きく変わる転機を迎えようとしているのかもしれません。
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